第53章 中野社長、今から妻を追いかけても、もう手遅れだぞ

長谷川栞はその場で足を止めた。形のいい眉がきゅっと寄り、冷えた眼差しで少し先の女を見据える。

「栞さんが私に会おうとしないのって、今のあなたが長谷川グループのお嬢様で、しかも社長だから? 私なんかじゃ釣り合わないって思ってるの?」

中尾美希は瞳の奥の嫉妬を引っ込め、涙を浮かべた顔を作って栞へ歩み寄ってきた。

近づくにつれ、濃厚な香水がぶわっと押し寄せる。甘ったるく、喉の奥を刺すような匂い。

栞は眉間の皺を深くし、目つきもさらに冷たくなる。だが一歩も引かなかった。

「栞さん、前にあなたが言ったじゃない。生まれなんて関係ない、誰が誰より偉いなんてないって……」

泣いているのに、目の底...

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